サスペンション
ダンパー講座④ HYPERCOの登場と減衰力の関係
2010年03月29日(月)
ダンパーに求められる、
「スプリングと分業化するための減衰力」 は、
HYPERCOスプリング の登場で、大きく変化しました。
なぜなら、HYPERCO 登場以前のスプリングは、
縮み始めのレート特性が、規定レートより低いタイプが、主流だったからです。
この、プログレッシブタイプのような特性を持ったスプリングでは、
同レートであっても 0G → 1Gまでのストローク量が、
大きくなってしまいます。
下の図を見てください。
たとえば、スプリングレートの表記が、
10kg/mm の2種類のスプリングがあったとしましょう。
これらのスプリングに、
コーナーウエイトに相当する300kgの荷重をかけると、
① のスプリングは、最初から、10kg/mmのレートを発生していますので、
300kg÷10kg/mm = 30mm のストロークとなります。
対して、② のスプリングは、初期のレートが表記より低く、
仮に縮みはじめ50mmまでの平均レートを6kg/mmとすると、
300kg÷6kg/mm = 50mm のストロークとなります。
そうです、この状態が、「1G」 と呼ばれる状態です。
そして、② のスプリングも、50mm以上のストロークでは、
表記どおり、10kg/mmのレートになると仮定すると、
「1G」 から、荷重が増える分には、両スプリングとも、
まったく同じ分だけ、荷重変化に対してストロークします。
が、しかし・・・、サスペンションは、縮むだけではありません。
「1G」 を境に、荷重によって、縮んだり、伸びたりします。
そして、縮むことに関しては、①も②も同等の変化となりますが、
伸びる部分では、大きな違いが発生します。
当然、1Gまでのストローク量の多い②は、
荷重が少なくなった状況では、伸び側のストロークが大きくなってしまうのです。
この状況を抑制するため、
ダンパーのリバウンド側の減衰を強くし、
内側のスプリングの、伸び上がりを抑制するという、
ダンパーセットが、以前は主流でした。
しかし、HYPERCOスプリングの登場により、
荷重移動によるスプリングの伸びと縮み量が同じとなることから、
このリバウンド減衰による、制御は不要となりました。
結果、バンプとリバウンドの減衰力は、同じレベルとなり、
「スプリングとダンパーの分業化」 が、可能となったのです。
もちろん、リバウンドの減衰力が、弱くなったことで、
ストリートでの乗り心地も、大きく改善されたのです。
HYPERCO スプリングって、スゴイでしょ?