ライフサイクルについて
エンジンオイルのライフに関して、重要な 「キー」 となるのは、 「粘度低下による劣化」 と、 「酸化による劣化」 です。
「粘度低下による劣化」 --> サーキット走行により、急激に劣化が進む
「酸化による劣化」 --> ストリートでの走行距離に比例して劣化が進む
まず、 「粘度低下による劣化」 とは、エンジンオイルが強い 「せん断」 を受け、粘度が下がることを指します。
サーキット走行等、高温、高回転、高負荷の状況では、エンジンオイルに、激しく 「せん断」 という力が加わり、エンジンオイルの粘度が低下します。結果、粘度の低下は、油圧にダイレクトに反映し、油圧低下を引き起こします。
通常、新しいオイルに対して、約20% 粘度が低下すると、交換時期と言われており、サーキット走行の有無によって、エンジンオイルのライフは、大幅に違ってきます。
「せん断」 に強いタイプのエンジンオイルなら、複数回のサーキット走行にも対応ができますが、 「せん断」 にあまり強くないタイプのエンジンオイルであれば、一度の走行で、かなり粘度が低下しますので、このあたりが、ライフに大きな差となって現れてきます。
また、 「酸化による劣化」 とは、文字通り、エンジンオイルに酸素が結合することで起こる劣化のことです。
エンジンオイルの温度が上昇すると、ベースオイルの原材料である炭化水素(CとHのみから成る構造体)の結合が切れやすくなり、そこに酸素が結びつき、それらが重合して、いわゆるスラッジと呼ばれる劣化生成物となってしまいます。
エンジンオイルには、酸化劣化を防止するために、酸化防止剤という添加剤が処方されていますが、この成分が消耗されつくすと酸化劣化の進行が一気に進みます。
この 「酸化による劣化」 は、長期間の継続使用によって、ボディーブローのように、徐々に劣化が進みますので、
ある面、走行距離にダイレクトにリンクしてくる部分です。
以上のように、ライフサイクルを決定する要因は、2種類あり、このどちらかの劣化が基準値を超えたときが、エンジンオイルの交換時期となります。
下段の 「エンジンオイル交換時期 一覧表」 は、これら2つの要因を考慮し、実際に、どのような走行環境にて、どれぐらい使用すれば、TM-SQUARE エンジンオイル 「M16A」 の交換時期になるかをシミュレーションすることができます。
「エンジンオイル交換時期 一覧表」
サーキット走行 | ストリート走行 | |||
---|---|---|---|---|
1日の走行セッション | オイル クーラー の有無 |
油温 | 走行 日数 |
|
30分 × 3回(90分) | なし | 130~140℃ レベル | × 2日 | + 約 2,500km |
30分 × 3回(90分) | なし | 130~140℃ レベル | × 1日 | + 約 5,500km |
30分 × 5回(150分) | なし | 130~140℃ レベル | × 2日 | + 約 1,000km |
30分 × 5回(150分) | なし | 130~140℃ レベル | × 1日 | + 約 4,000km |
30分 × 3回(90分) | なし | 130~140℃ レベル | × 各1日 | + 約 1,500km |
30分 × 5回(150分) | ||||
30分 × 3回(90分) | あり | 110~120℃ レベル | × 3日 | + 約 1,000km |
30分 × 3回(90分) | あり | 110~120℃ レベル | × 2日 | + 約 3,000km |
30分 × 3回(90分) | あり | 110~120℃ レベル | × 1日 | + 約 6,000km |
30分 × 5回(150分) | あり | 110~120℃ レベル | × 2日 | + 約 2,000km |
30分 × 5回(150分) | あり | 110~120℃ レベル | × 1日 | + 約 5,000km |
30分 × 3回(90分) | あり | 110~120℃ レベル | × 各1日 | + 約 2,500km |
30分 × 5回(150分) |
走行なし | 約 10,000km |
○ 上記シミュレーションは、エンジンオイル交換時期のひとつの目安であり、明記されたサーキットの走行回数、ストリートでの走行距離を保障するものではありません。
○ 上記シミュレーションは、エンジンオイルを オイルパン ドレンプラグ より抜き(全量交換)、同時に、オイルフィルターも交換された場合の交換時期です。交換前のエンジンオイルが、TM-SQUARE エンジンオイルに、混入する場合は、表記よりライフは短くなります。(エンジンオイルをドレンプラグから抜き、オイルフィルターを交換されても、エンジン内に、残留する微量のオイルに関しては、想定されています)
○ 上記シミュレーションは、TM-SQUARE エンジンオイル をご使用になる前に、メタル、ピストン、シリンダーをはじめとする 各摺動部に、ダメージがないことを想定したライフとなります。少しでも、ダメージを受けている可能性があれば、「エンジンオイル交換時期 一覧表」より、早めに交換を行ってください。
○ ストリートとサーキットを併用する場合、
①交換直後にサーキットで使用し、その後ストリート
②交換後、ストリートで使用し、最後にサーキット
では、②の方が、エンジンオイルにとっては厳しい条件となります。
エンジンオイルの交換タイミングは、サーキット走行前が、望ましいです。
○ サーキットでは、一切使用しない場合でも、ワインディング等にて、スポーツドライビングをされる方は、「エンジンオイル交換時期 一覧表」より、早めにオイル交換してください(5000~7000kmが目安です)。
○ ストリート/サーキットとも、交換後1年以上の時間が経過している場合は、「エンジンオイル交換時期 一覧表」内の状況でも、オイル交換をしてください。
TM-SQUARE エンジンオイル 「M16A」 使用後の エンジン内部の状況
TM-SQUARE では、エンジンオイルの最終仕様が決定し、サーキット&ストリートにおけるロングランテストに入る前に、エンジンのオーバーホールを行いました。
そこで、各摺動部品を新品に交換し、TM-SQUARE エンジンオイル 「M16A」 のみを使用して、全国各地のサーキットを転戦。
エンジンオイルの交換ライフも、徐々に伸ばし、最終的には、サーキット3イベント + 4,000km に及ぶストリートテストをエンジンオイル無交換にて実施しました。
もちろん、交換後のエンジンオイルは、性能がどれぐらい低下しているか、すべて検査を行い、その結果から、「オイル交換目安表」を作成しました。
また、「スイフト専用」と言うからには、実際にサーキット/ストリートにて使用し、その結果、エンジン内部が、どのような状況になっているか、再確認する必要性があると考えました。高温/高負荷での潤滑レベルや、高温での粘度低下の状況は、やはり、エンジンをバラして確認しないとわかりません。
そこで、ロングランテスト前に、エンジンを組んでいただいた、RSセリザワ(レーシングエンジンチューナー)のセリザワ氏に、各部の磨耗状態を確認いただきながら、エンジンをバラしていただきました。
その結果、「素晴らしい磨耗状況」と、お褒めの言葉までいただきました。
では、TM-SQUARE エンジンオイル「M16A」 を使用した、エンジン内部の写真をお見せしましょう!
① 4番の「子メタル」(下側)です。ピカピカで、まさに、パーフェクトでした。
② 4番の「子メタル」(上側)です。M16Aエンジンで、潤滑の一番厳しい部分ですが、
一番あたりが強く出る部分も、◎ でした。
③ 子メタルのお相手 クランクジャーナルです。
メタルと同様に、光輝いていました。
④ 4番の「親メタル」です。エンジンオイルのクォリティに、直結する部分ですが、非常に美しい状態でした。
⑤ 4番のピストンです。通常、スカート部には縦キズが発生するのですが、目立つような縦キズはありませんでした。
⑥ 4番シリンダーです。ピストンは、わずかに、首を振りますので、シリンダーのサイド部には、
ほんの少しあたりが強い部分があります。でも、それが通常より、格段に少ない状況でした。
⑦ カムシャフトです。カム山の部分は、通常、少しあたりが強くなりますが、それすら、極々わずかでした。
⑧ タペットシム(アウターシム)です。カム山が当たる部分ですが、磨耗が進んでいる箇所はありませんでした。
以上の結果から、TM-SQUARE エンジンオイル「M16A」は、油温が高い状況でも、潤滑レベルが非常に高く、十分な油圧が確保できていることを実証しました。