ハイエース サスペンション攻略 by 田中ミノル

ご注意

以下の内容は、すべて、田中ミノル が、開発テストを通じて感じた個人的な見解となります。



ハイエース の サスペンション を攻略するには、サスペンション 形式を理解する必要があります。



フロント  →   ダブルウイッシュボーン 式 トーションバースプリング

リア    →   車軸式半楕円 板ばね


カンタン に解説しますと、フロント は、ダブルウイッシュボーン 式となり、
スプリング は、一般的な コイルタイプ ではなく、よく公園にある 「鉄棒」 のような 
棒状の スプリング (トーションバースプリング) となります。


この棒のネジレによって、スプリングレート が発生する仕組みとなっております。


リア は、トラック/ダンプ等、荷物をたくさん積む クルマ の王道である 板 バネ (リーフスプリング) となります。


これらの サスペンション 形式を有するハイエース の足回りを チューニング する第一歩は、やはり、ローダウンだと思います。


なぜなら、ハイエース の重心 ( ウエイトセンター )は、かなり高いので、どうしてもコーナー が苦手です。
そこで、ローダウン により、重心を下げれば、動きが、シャープに、そして スポーティー に、なるからです。



しかし、フロントサスペンション には、少々、厄介な問題点も発生いたします。
この、問題点を解説する前に、まず、ハイエース の フロントサスペンション の ストローク 量を解説いたしましょう。


サスペンションストローク の ポイント となる3つのポジションを覚えてください。



① フルバンプ


サスペンション が フルストローク して、もうこれ以上、車体が下がらない (縮まない) ポイント を指します。



フルバンプ


② 1G (ワンジー)


クルマ が地面の上で、静止している状態を指します。


ワンジー


③ フルリバウンド


サスペンションが 伸びきって、もうこれ以上、車体が上がらない (伸びない) ポイント を指します。
(一般的には、ジャッキアップ している状態です)



フルリバウンド


上記の位置関係 (タイヤセンター) を図で表すと、


図1

となります。


注 1G ポイント は、乗車人数や、荷物の量により変化します。
   重量が大きいほど、フルバンプ 方向に移動します。



なお、上記、図① は、ノーマル車高での位置関係となり、
1G ポイントが、ストロークのセンター周辺に位置し、
バンプ/リバウンド ストローク も、ほぼ均等となっています。


このように、ノーマル車高では、とても良い感じの 1G ポイント なのでありますが、
ローダウンを行うと・・・・・・、



① フルバンプ および、③ フルリバウンド の位置は、
ストロークストッパー と呼ばれる ゴム製のストッパーに、
アーム 類が タッチ した状態で、決まりますので、




リバウンドストッパー

① フルバンプ および、③ フルリバウンド の位置は変わらず、

② 1G ポイント のみが、車高調整機能 にて、変更されることになります。



すると、ローダウン を行うと、1G ポイント が、フルバンプ 方向に移動することから
バンプストローク が短くなり、リバウンドストローク が、長くなってしまいます。



図2




※ 図のように、② 1G ⇔ ③ フルリバウンド間 のストローク が長くなると、
  リバウンドストッパーも、有効に活用できないことから、リバウンド側への動きが、
  より 大きくなってしまいます。



ハイエース を ローダウン すると、スプリングレート を 大幅にダウン したように感じる
 「フワフワ 感」は、この ストロークバランス (リバウンド側のストローク量が大きい)
に よることが、原因になっているのです。



人間の感覚は、クルマが、上下に動くトータルの量 (ストローク 量) が大きいと、
スプリングレート が同じでも 「やわらかい」 と感じてしまうのです・・・。



特に、ギャップ を通過するとき、大きく リバウンド 側に弾かれた後に、1G ポイントを通過し、
バンプ 側の領域に入ると、かなりの ストローク 量 となることから、
どうしても、「やわらかい」 と感じてしまい、そして、ストローク する量 が大きいことで、
ストローク スピード が速くなることも、「やわらかい」「フワフワしている」 と、感じる要因になると思われます。



要するに、ローダウン により、リバウンド 側に、動きやすくなることで、
全体的に、ストローク する量が増え、ドライバー は、やわらかく感じる。



これが、ローダウン による フロント サスペンション へのデメリット だと思います。



※ 上記以外に、ロールセンター位置の変化も、要因となると思われますが、あまりにも、解説が複雑になるため、省略します。




一方、リア に関しては、

リア の リーフ 式 サスペンション では、ブロック と呼ばれる パーツ を装着して、車高を下げる システム となり、
フロント のように ストローク 量は変化しないため、車高が下がったことだけが、ダイレクト に メリット として反映します。


ローダウン を行うことで、


○ 重心高が下がったことにより、ドライバー が感じる ロール が、かなり抑制


○ リア の安定感が増し、ドライバビリティ が向上 (高速安定性が バツグン)


となることから、 ローダウン による デメリット は、ほとんど感じず、ローダウン による メリット は かなり大きくなります。




※ 上記の コメント は、フロント 2インチ、リア 2インチ  の ローダウン による コメント となります。