いよいよ、2年間の開発を終え、
TM-SQUARE SPORT ECU Ver.3 をリリースすることになりました!
この Ver.3 は、スイフトスポーツ(ZC31S)に採用されている
電子スロットルの制御(スロットルマップ)を
よりドライバーがコントロールしやすいよう独自の解析により変更を加え、
ドライバビリティ(運転のしやすさ)に、重点を置いた、ECU DATA となります。
※ 点火、燃調、バルタイ等のデータは、すべて Ver.2 DATAがベースになっています。
(ここから、かなりの長文です・・・)
求めたのは、ドラテクに直結した 究極のドライバビリティ!
スイフトスポーツ(ZC31S)の純正 ECU に組み込まれている
スロットルマップ DATA の特徴は、
低回転域 + アクセル開度10%~20% の状況 では、
ドライバーの指示(アクセル開度)より、実際にスロットルは開かず、
高回転域では、ほぼ全域でドライバーの指示以上にスロットルが開きます。
上記の特徴から、ECU 開発において、こんな出来事がありました。
ダイナパック で、ノーマルエンジンのパワーを計測すると、「94ps」 (係数 ゼロの状態)
そこで、アクセルを全開(100%)から、少し戻して、
アクセル開度を 80% にして、パワーを計測しても、「94ps」 ・・・・・・。
もっと、アクセルを戻して、50% にすると、やっとパワーは落ちはじめ、
「91ps」 になります。
これらが、なにを意味しているかというと、
高回転域では、ドライバーの意思に反して、
勝手にスロットルが、開いているということなのです!!
注
本文にある アクセル/アクセル開度とは、ドライバーが操作するアクセル量を指します。
また、スロット/スロットル開度とは、スロットルボディー内のバタフライが開く量を指します。
低回転域 + アクセル開度10%~20%の状況 において、
実際にスロットルが、あまり開かないことは、
燃費や、排ガスの問題を考慮すれば、ある面、致し方ない部分であり、
スポーツドライビングでは、使用しない領域です。
(少なくとも、田中はこの部分にストレスを感じたことはありません)
しかし、中~高回転域 において、
ドライバーの意思より、スロットルが開くことは、
スポーツドライビングにおいて、大きなデメリットが発生します。
そのデメリットとは・・・・・・・・、
たとえば、3速全開から、ブレーキング & 2速にシフトダウンして、
ヘアピンコーナーへ進入することをイメージしてください。
(どのサーキットの どのコーナーでもOKです)
ブレーキリリースとステアリングを組み合わせて、
クリッピングポイントを目指し、
クリップを過ぎたあたりから、アクセルを踏んで立ち上がりますよね?
これを、クルマの姿勢で解説すると、
進入時は、ブレーキを踏んでいることから前傾。
立ち上がりは、アクセルを踏むことから後傾となります。
問題は、前傾 → 後傾 に移り変わる部分です。
この部分は、ドラテク的にも、できるだけスムーズに移り変わることが重要ですので、
アクセルの踏みはじめは、ミリ単位で踏み込んでいくのですが、
シフトダウン & エンジンブレーキによってある程度、エンジン回転は高い状態です。
そうすると・・・・・・・・、
純正 ECU のスロットルマップでは、
いくらドライバーが、スロットルを一気に開けないように、優しくアクセルを踏んでも、
実際スロットルは、「ガバッ」と、大きく開いてしまうのです。
結果、一気に前傾状態から、後傾状態になることから、
この勢いで、トラクションが抜け、アンダーステアが発生します。
また、ミッション、ドライブシャフト、クラッチ等々には、
ほんの少しですが、減速 → 加速 の間に、クリアランスがありますので、
急激に、スロットルが開くことから、このクリアランスを一気に飛び越えて
トラクションが掛かってしまいます。
このとき、「ガツン」 とショックがあり、横方向にギリギリ耐えている
タイヤのグリップも、カンタンに限界を越えアンダーステアになってしまうのです。
少々、余談ですが、オートバイのコーナリングでは、
減速区間では、エンジンブレーキが効くことから、
チェーンの下側が張り、チェーンの上側には、「タルミ」 ができます。
反対に、加速区間では、チェーンの上側が張り、下側には、「タルミ」 ができます。
当然、この切り替わりの区間で、スロットルが一気に開くと、
大きなショックとともに、リアタイヤのグリップはなくなり、
横転してしまうことから、
スポーツライディングでは、
「チェーンを張るためのスロットル」 と呼ばれる、テクニックを使用します。
チェーンさえ、加速に備えて、シッカリ張れていれば、
そこからアクセルを開けても、ショックがなく、
トラクションはスムーズに掛かることから、
限界時のコーナリングでは、必ずこのテクニックが使用されています。
そして、チェーンの 「タルミ」 と、まったく同じことが、
ミッション内、ギアのクリアランス等により、4輪車輌にも発生しているのです。
ドラテクを最大限に活用し、速く、安全に走るには、
このチェーンの 「タルミ」 を取るための、アクセル操作が、4輪でも必要となります。
では、下のアクセルロガーを見てください。
まず、全開状態から、①区間で、一気に減速をはじめ、一旦アクセルは、全閉になり、
②区間では、ヒール & トウ による ブリッピングのためアクセルを踏み込んでいます。
そして、コーナーの立ち上がりとなる ③区間では、ほんの少しアクセルを踏み、
各部のクリアランスが取れたことを確認して、一気にアクセル開度は高くなってきます。
この走りができれば、アクセルを踏みはじめる区間にて、アンダーステアを最小限に
抑制することができるのです。
話を戻しましょう。
このドラテクの 「キモ」 になる、「加速も減速もさせない、ほんの少しのアクセル」
それが、スイフトスポーツの 純正 ECU では、
かなり難しく、不可能と言っても過言ではありません。
なぜならば、中~高回転域 では、
スロットルが、指示以上に大きく開いてしまい、
その結果、急激にトラクションが掛かり、アンダーステアを助長するからです。
この回転域によってスロットル開度が変化することは、
静止状態にて、アクセルを踏み、5000rpm に回転をキープするトライを行えば、
誰でも実感できると思います。
(回転によりスロットル開度が変化するので、かなり難しいです・・・・)
もちろん、スロットルコントローラーや、チューニングECU により、
純正 ECU 以上にスロットルが開く仕様になっている場合は、
「加速も減速もさせない、ほんの少しのアクセル」 は、より難しい状況となります。
では、高回転域において、スロットルがどのように開くかをイメージ化した
下のイラストを見てください。
解説
純正 ECU のスロットルマップは、踏みはじめの部分(アクセル開度10~50%)では、
目盛りが詰まっていますので、少しのアクセル操作にて、スロットルは大きく開きますが、
全開に近づくにつれ、目盛りが大きくなり、感度が鈍くなります。
街中や、ハーフスロットルでは、パワフルに感じるエンジンが、
全開にするとパワーが足りなく感じるのは、このスロットルマップの影響です。
対して・・・・、
TM-SQUARE SPORT ECU Ver.3 の スロットルマップは、踏みはじめの部分では、
目盛りを大きく取り、全開に近づくにつれ、目盛りが細かくなります。
ドライビングにおいて、繊細なアクセルコントロールが必要なのは、
ほとんどがアクセルの踏みはじめから、スロットル開度50%までであることから、
この部分の目盛りを大きく取り、コントロール性を向上させています。
また、スロットル開度50%以上に関しては、繊細なアクセルコントロールは、
さほど重要ではないため、目盛りを少し細かくしています。
(スロットル開度50% → 100%は、一気に全開になることが多い)
デメリット
TM-SQUARE SPORT ECU Ver.3 の デメリットとして、
同じスロットル開度(同じ加速)にする場合、
純正 ECU DATA 以上にドライバーは、アクセルを踏まなければならないことが、
あげられます。
(ドライバーの感覚としては、アクセルをたくさん踏んでいるように感じますが、
実際のスロットル開度は同じです)
特に、スロットルコントローラー装着車のように、
少しアクセルを踏むことによって、クルマが大きく加速することにニーズがある場合、
TM-SQUARE SPORT ECU Ver.3 は、真逆の特性となりますので、
オススメ致しません。
※ スロットルマップのみの変更ですので、全開にした状況でのパワーは同じです。
キビキビと効くエンジンブレーキ!
TM-SQUARE SPORT ECU Ver.3 では、アクセルOFF による、
スロットルの戻りスピードも、変更されています。
純正 ECU では、素早く アクセルを全閉にしても、
スロットルは、ドライバーのイメージより、少しゆっくりと戻りますが、
Ver.3 では、この部分のレスポンスを上げることで、エンジンブレーキが
有効に使用できます。
アクセルの開閉によるドライバーの意思が、
よりリニアに、そしてダイレクトに伝わることから、
キビキビとした、心地よいドライバビリティを実現します。
また、エンジンブレーキが、リニアに効くことにより、
インマニ内の負圧も素早く立ち上がることから、
アクセル → ブレーキ の踏み換えスピードが上がっても、
ABS が誤作動することが大きく抑制されました。
ストリートでのメリット
TM-SQUARE SPORT ECU Ver.3 は、
スポーツドライビングでの、ドライバビリティの向上を目的に
開発を行いましたが、ストリートにおいても、大きなメリットがありました。
純正 ECU スロットルマップでは、
低回転域 + アクセル開度10%~40% の領域において、
スロットルがリニアに開きません。
10%~20%では、ドライバーの指示より、スロットルは開かず、
30%~40%になると、急激にスロットルが開きます。
この仕様では、アクセルを少し開いた状態(30%~40%)では、
一気に回転が上がり、それを落とすために、
少しアクセルを戻す(10%~20%)と、スロットル急激に閉じることから、
エンジン回転数が、低回転に向かう時のクラッチミートが、非常に難しくなります。
Ver.3 のスロットルマップは、この踏みはじめの部分で、
目盛りを大きくしていることから、
必要以上にスロットルが、ピーキーに反応しませんので、
エンジン回転数が、高回転に向かう時も、
そして、エンジン回転数が、低回転に向かう時も、
クラッチミートが、とってもカンタンになります。
特に、渋滞時や、坂道でバックさせながら車庫入れ等のストレスが、
大きく軽減されます。
すでに、開発段階にて、Ver.3 を導入いただいた スイフトオーナーさんたちには、
「発進が楽になった」
「街乗りで、より扱いやすくなった」
「踏めば踏むだけ、加速する」
「コントロールがカンタンになった」 等々
ドライバビリティの高さをコメントされています。
また、クラッチミートが、カンタンになることで、
軽量フライホイールの装着も、よりマッチングが、良くなります。
AT車にも、かなりオススメ!
以前から、田中が気になっていた、AT車の特性。
それは、発進時に、少しアクセルをラフに踏むと、一気に加速モードに入り、
慌ててアクセルをOFF にすると、そのまま、2速に入ってしまい、
以降の加速が 「マッタリ」 してしまうことです。
Ver.3 のスロットルマップなら、少々ラフにアクセルを踏んでも、
踏みはじめの部分では、必要以上にスロットルが、ピーキーに反応しませんので、
すぐに、2速に入ってしまうことが抑制でき、ストリートでのコントロール性が高まります。
もちろん、スポーツドライビングにおいても、「加速も減速もさせない」
アクセルコントロールが、可能となりますので、アンダーステアの抑制にも効果的です。
以上、かなりのボリュームとなってしまいましたが、
TM-SQUARE SPORT ECU Ver.3 の詳細解説
いかがでしたでしょうか?
ドライバビリティ の向上は、
ストリートでも、サーキットでも、
必ずやみなさんの 味方になってくれると、思いますよ~。
あっ!
書くの忘れてた!!
お値段は、
Ver.2 → Ver.3 へのバージョンアップ の場合 ¥15,000
新規導入の場合は、いつもと同じ ¥85,000
となります。
長文、お付き合いいただき、ありがとうございました!