サスペンション
ダンパー講座③ 理想的なダンパーって?
2010年03月26日(金)
田中の思う、理想的なダンパーの条件は、2つ。
一つ目は、
「スプリングの動きに悪影響を与えないこと」 です。
スプリングは、荷重に比例して、
ストローク量(ロール量)を決定します。
この動きにダンパーが関与しないと、
荷重の移動量に比例して、クルマが傾いてくれますので、
ドライバーは、荷重の移動量が手に取るように把握できます。
要するに、「乗りやすい」 「限界がわかりやすい」 といった
ドライバビリティーの高いクルマになり、
セッティングの方向性も非常にシンプルになります。
二つ目は、
「ダンパーが動き始めた瞬間から、シッカリと減衰力が立ち上がること」 です。
みなさんのイメージでは、ダンパーが動き始めるのは、
ブレーキやコーナリングのアクションを起こした時ですよね。
でも、実際は、ずーっと、ダンパーは動いているのです。
下のグラフは、岡山国際サーキットの
裏ストレート部分のデータロガーです。
小刻みですが、かなり、動いているのが理解できると思います。
ちょっと、見にくいですが、グラフ下の目盛りは、
時間軸となり、一番小さな目盛りが、コンマ1秒となります。
グラフから読み取ると、だいたい、1秒間に7~10回、
2mm程度、伸びたり縮んだりを繰り返していますよね?
ということは、ダンパーピストンも、
2mm程度、上下に動いているんですが、
この時、ピストンのシムの中に、
オイルが通過していないダンパーって、結構多いんです。
要するに、ステアリングでいうところの
「遊び」 が発生しているということです。
こうなると、動きはじめの最初の2mmは、
減衰が立ち上がらないダンパーとなり、
走行中の微振動で、上下4mmの間は、
減衰力がゼロとなってしまう場合があります。
この状態で、ギャップや荷重移動により、
急にダンパーが大きくストロークすると、
最大、動きはじめからの4mmの間、
減衰力がゼロの状態となり、
その後、急激に減衰が立ち上がってしまします。
また、減衰力がゼロだと、
当然、ダンパーのピストンスピードも上がってしまい、
その後、シムの間にオイルが通過しはじめる瞬間、
大きな減衰が突然発生してしまいます。
要するに、突っ張ってしまう、バネ成分の強いダンパーとなるのです。
反対に、最初の1mmに減衰があれば、
途中で、減衰に大きな変化がありませんので、
スムーズでしなやかな、スプリングと荷重の変化量に
的確に応じる、リニアな足廻りとなります。
これが、田中が求めている、理想的なダンパーの
2つの条件なのです。