サスペンション
ダンパー講座② ダンパーでロール量をセットアップするデメリット
2010年03月25日(木)
以前は、車高調と言うと、
ノーマルに比べ、ストローク量が少なくなることから、
その分、強い減衰が必要と考えられ、
レースの世界でも、10~15年ぐらい前までは、
バンプもリバンプも”ガチガチ”の時代がありました。
しかし、減衰力の高いダンパーを装着すると、
どうしてもダンパー自体がバネ成分をもってしまいます。
たとえば、スプリングレートは、10 Kgf/mmなのに、
それに、ダンパーの減衰力から発生するレート(バネ成分)、10 Kgf/mmが加わり、
ある部分では、20 Kgf/mmになってしまうこともあるのです。
では、ダンパーの減衰力調整を利用して、
「ロール量」 を変えると、何がいけないかを説明しましょう。
もし、スプリングのレートではなく、ダンパーの減衰で、
「ロール量」 を変えてしまうと・・・・・、
① ダンパーのストロークするスピードによって、減衰(スプリングレート)が変化する。
② ダンパーオイルの温度により、減衰(スプリングレート)が変化する。
といった理由で、不都合が発生します。
①の場合、ダンパーは、ストロークするスピードが速いと、
大きな減衰力が発生しますので、
コーナーの種類によってダンパー減衰を加味した
全体のバネレートが変化してしまいます。
たとえば、ハイスピードコーナーでは、
20 Kgf/mmのバネレートなのに、
ロースピードコーナーでは、12 Kgf/mmになったり、
コーナーの入口では、20 Kgf/mmのバネレートが、
コーナーの中では、15 Kgf/mm → 12 Kgf/mm と
いったように変化します。
また、②の場合、
ダンパーは、ダンパーオイルの温度が高くなると、
減衰が弱くなりますので、
同じコーナーの同じ場所でも、
最初のラップでは、20 Kgf/mmだったものの、
連続ラップで、ダンパーオイルの温度が上昇すると、
15 Kgf/mm → 12 Kgf/mm と変化します。
こうなると、ダンパーのバネ成分を加味した、
全体のスプリングレートが変化することから、
タイヤにかかる荷重の増減も変化し、
結局、ピーキーな特性から、
タイヤのグリップがうまく使えなくなってしまいます。
もちろん、その時々で、スプリングレートが変化することから、
ドライバビリティも、著しく低下してしまいます。
要するに、「ロール量」 が多いならば、
「ロール量」 を決めるスプリングのレートを上げるべきです。
そうすると、どこのコーナーでも、コーナーのどの部分でも、
荷重にリンクした、「ロール量」 となり、セットアップもシンプルで、
ドライバーも動きを把握しやすくなります。
これをダンパーで行うと、あまりにも変化してしまう要素が多すぎて、
セッティングもドライビングも複雑になるだけなのです。
ダンパーの減衰で、セットアップするのは、
「ロール量」 ではなく、「ロールスピード」 です。
スプリング → 荷重の増減によって、”ロール量”を決定する
ダンパー → ロールのスピードを決定する
といった、完全分業が、一番シンプルで、
ドライバーは荷重移動のインフォメーションが把握しやすく、
タイヤのグリップを最大限に活用できるのです。