駆動系パーツ
田中ミノル式  FF 機械式 LSD 完全解説  「曲げるための LSD 有効活用法」⑥

2015年01月26日(月)

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今回解説するLSD 装着のメリット。それは、

「コーナー進入時 (減速時) と、高速コーナーで、安定感が増大する」

という 内容なのであります。
(この安定感とは、リアの安定感を指し、
オーバーステアになりにくいという意味合いです)

では、まず、コーナー進入時 (減速を伴うコーナーの進入時) から
解説しましょう!
減速を伴うコーナーへ進入する場合、ブレーキング + シフトダウン
によって、クルマは大きく前傾していることから、リアの荷重が少なくなり、
セットアップによっては、オーバーステアが発生しやすい状況となります。

特に、進入部分が複合コーナーになっていて、
手前コーナーの 「G」 が残ったままのフルブレーキでは、
とてもピーキーな特性となりやすく、場合によっては、
クルマの安定感と相談しながら、ブレーキの強さを決める必要もあります。

このように、コーナー進入時、リアの安定感が不足している状況では、
LSD を装着すると、大きなメリットになります。

なぜなら、LSD の装着によりロック率が上がると、
クルマは真っ直ぐ走ろうとしますので、直進安定性が向上し、
このブレーキング時の唐突なオーバーステアを抑制してくれるからです。

また、少々、余談ですが、よく、1way タイプのLSD では、
減速側の カム角が設定されていないため、

「減速時は、LSD によるロックが発生せず、左右のタイヤがフリーになる」 

という話を聞きますが、これは間違っているように思います。

理由は、いくら減速側の カム角が設定されていなくても、
イニシャルトルク分 LSD は、ロックされるからです。

ですから・・・、減速時の効きが比較的マイルドな
1way タイプのLSD でも、コーナー進入時の安定性は、
オープンデフと比較すると向上します。

※ 上記の解説は、4輪のタイヤがすべてグリップしていることが
条件となります。タイヤが、グリップしていない状況では、
LSD の効きが強い方が、オーバーステアのバランスになることもあります。

では、タイヤがグリップしている状況における デフのロック率と、
減速時の安定感、そして、アンダー/オーバーのバランスを図解しましょう。

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上記のように、デフのロック率が高くなると、減速時の安定感が増し、
ドライバーは、思い切ったメリハリのあるブレーキングが可能となります。

結果、高い進入スピード & 大きな荷重移動を活用でき、それを組み合わせて、
より曲がりやすい状況をドライバー自身で作れることも、
LSD 装着のメリットのひとつです。
(もちろん、LSD のセットアップにも左右されます)

そして、LSD の装着による 強く安定したトラクションは、
高速コーナーにおいても、とても大きな武器になります。

なぜなら、オープンデフ等、デフのロックが弱く不安定な状況だと、
路面の小さなギャップに影響を受け、トラクションが小刻みに変化し、
オーバーステアの原因となる場合があるからです。

また、仮にオーバーステアバランスには至らない場合でも、
この不安定なトラクションは、ステアリング操作や、アクセルON/OFFに、
かなり神経を使う ピーキーな特性となり、ドライバーは自信を持って
攻めることができなくなってしまいます。

そこで、LSD を装着すると!飛躍的にトラクション性能が向上し、
連動して直進安定性も向上。また、トラクションの変化量も少なくなる
(一定のトラクションが安定してかかり続ける)ことから、
独特の 「ドッシリ感」 が生まれ、高速コーナーにおける安定感が増大します。

この安定感は、ドライバーの恐怖心を大きく抑制し、躊躇なくアクセルが
踏めるというメリットとなりますので、特に、トラクションが安定しない車両、
トラクションを掛けづらいハイパワー車両においては、
ドライバビリティを大きく向上させることが可能となります。

それに、トラクションが強く安定していることで、同じスピードで
高速コーナーに進入し、同じようにアクセルを踏んでいても、
エンジンパワーが、より効率よく路面に伝わることから、
コーナーの出口では、スピードが少し速くなるというメリットも加わります。

以下は、デフのロック率と、高速コーナーでの安定感、
そして、アンダー/オーバーのバランスを図解しています。

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デフのロック率が高い場合は、高速コーナーで安定しているという
メリットはありますが、少々曲がりにくくなり、バランス的には、
アンダーステア方向へ。

そして、LSDのロック率が低い場合は、曲がりやすいというメリットは
ありますが、安定感が弱くなり、オーバーステア方向のバランスとなります。

以上のように、減速時/高速コーナーともに、デフのロック率は、
クルマの安定性に対し大きく関与しています。

そして、安定性が向上すると、クルマは、アンダーステア方向のバランス
となることから、どれぐらいの強さでLSD を効かせるかによって、
そのクルマのキャラクターも決定付けられてしまう
とても重要なパーツなのであります。

また、減速時/高速コーナー における
LSD セットアップアップ の 「キモ」 は、
アンダーステアは、さほど強くない状況で、十分な安定性がある
「ちょうどイイ効き」 に設定することです。

さぁ~、今まで、6回に渡りお届けしてまいりました

田中ミノル式
FF 機械式 LSD 完全解説 「曲げるための LSD 有効活用法」

LSDの解説をメカニズムの図解や、複雑な計算式を使用するのではなく、
ドライバー目線(ドライバーが感じ取るフィーリング)のみで、
解説を行うという かなり無謀な企画でしたが、
みなさん、ご理解いただけましたでしょうか?

LSD を使用すると、ドライバーは、どのように感じ、
LSD をどのように活用すれば、速く走れるのか・・・。

ということを、一部でもご理解いただけていたら、田中は嬉しいですね~。

最後に、もう一度、おさらいすると・・・、

みなさんに活用していただきたい LSD のメリットは、

 オープンデフでは、反応してくれない、タイトコーナーの
  アクセルを踏み始める ポイントで、的確にトラクションが反応してくれる

② タイトコーナーのクリッピングポイント周辺で、ほんの少しアクセルを
開くと、アンダーステアが抑制され、急激にクルマが曲がり始める
  (LSD乗り)

③  コーナー進入時(減速時)と、高速コーナーで、安定感が増大する

といったことです。

そして、田中の個人的な見解となりますが、LSD を装着したことに対して、
少々注意が必要な部分は、

 ミッションオイルの交換頻度が高くなる

 アクセルON にて、LSD の ロック率が変化する状況で、
  少しだけ、直進安定性が悪くなる部分がある
  (ステアリングをホールドしていれば問題ない範囲です)

 LSD がロックすることにより、少し走行抵抗が増える
ことから、LSD
のメリットを有効活用できないと、
ラップタイムにアドバンテージがない

 LSD のセットアップ、使用するオイルによっては、
チャタリングが発生し、
ストリート走行での快適性が失われる

 キャンバーがガッツリと付いている場合、内輪の内側角の磨耗が進みやすい

と、なります。

なかなか、書きにくい部分ではありましたが、
みなさんが、今後、LSD を投入するかどうかの判断材料として、
メリットだけではなく、注意点も必要かと思い、誤解を恐れず、
書いてみました。

いや~、かなりの 長文となりましたが、以上が、

田中ミノル式 
FF 機械式 LSD 完全解説 「曲げるための LSD 有効活用法」 となります!

最後に、本ブログを書くために、たくさんのみなさんに、
ご協力いただきました!

TOM’S  レーシングエンジニア の TJ  さん

モーターファン イラスト レーテッド 編集部の M さん

モータージャーナリスト の S さん

内容を確認いただきました K 先生

心からお礼申し上げます。
ありがとうございました!

そして、長編ブログに、お付き合いいただきました みなさん!!
ありがとうございました!!